インタビュー・大岡良樹

P1 - P2 - P3 - P4 - P5 - P6 - P7 

『ゲイングランド』制作スタート

─  『ゲイングランド』の企画は、どのようにスタートしたんですか?


■  対戦ゲームができるまでは、アメリカ市場向けには『ガントレット』のような複数人でワイワイ遊べるゲームが営業的に望まれていたの。先にゲームオーバーになった人がコインをじゃんじゃん入れちゃうような……(笑)

そういうこともあって『ゲイングランド』の企画検討していた時には、思いっきり『ガントレット』を意識していました。チームの横に『ガントレット』を置いて、参考にしていたほどです(笑)。だけど、実際に作りはじめたらゲーム性も違うものだし早々に片付けちゃった。


─  はじめの段階では『ガントレット』に似ていたんですか?

『ガントレット(1985年)』

米ATARI社開発のアクションゲーム。迷路のように入り組んだダンジョンを舞台に、大量に現れる敵を倒しながら出口を目指す。最大4人同時プレイが可能。
■  いや、最初から1プレイヤー持ち駒3コマンドでスタートになっていたし(『ガントレット』は1プレイヤー1キャラで体力制)、ゲーム性はまったく異なるものでした。向うが体を張ったアクションなら、コチラはシューティングだ、って。

ちなみに最初の企画では、「敵を倒すことにより、お金が手に入って、それでコマンドを買ったり売ったりできる“傭兵さんコーナー”」もあった(笑)。それが作っている間にどんどんシステムがこなれていった。

初期の『ゲイングランド』企画書には基本ルールとして…

パワーアップ=1UP。ゲーム難易度がかなり高く、すぐに死ぬように設定する。しかし、1UPが容易ですぐ増える。全滅する前にいかに1UPするかが腕の見せ所となる。

と書かれている。
─  そのシステムも採用されなかったんですね。

■  うん。セガがアーケードの『ファンタジーゾーン』で、ショップのシステム(集めたお金で武器や自機を購入するシステム)を取り入れたわけだけど、これを『ゲイングランド』でやると枠がはずれちゃう。

金でコマンドを選べると、このゲームでは難易度調整やシナリオをアーケードとしてあざとくしなければならないから。そういう理由で、「傭兵さん」のアイデアをやめ、現在のシステム(新しいキャラが途中からどんどん加わる)だけになったのね。

─  作りながらシステムを変えていったんですか?

■  そうそう、例えばコマンドがやられると1キャラだけ「捕虜」として残るけど、あれも企画書にはなくて、開発途中でシナリオ上必要なコマンドがやられた時の調整方法に困り、その対処法として付け加えたら同時にプレーヤ間のコマンド交換機能が出来ちゃった。

─  当時(1988年)のアーケードゲームの中で、縦の1画面固定ゲームというのは珍しいと思うのですが、その辺りも企画の段階で決まっていたんですか?

『ゲイングランド』の画面構成

■  最初の企画はスクロール仕様だったよ。でも、スクロールさせるゲームはマルチプレイヤーでやった時に逆に遊びにくいから。例えばプレイヤーが画面後ろで頑張っているのに他プレイヤーが進むと強制スクロールされたりする。

それを取り入れたゲームもあったけど、結局プレイヤー全員が自由に動けないのね。このゲームを進めて(極めて)いくと、どのタイミングで、どの敵キャラをつぶしていけばいいのかってことを予測して、自分で戦術を組んでから攻略していかなければいけない戦略的なゲームだということがわかるでしょ。

プログラム開始時点に延々企画者と口論して勝手に固定画面で作り始めたら落ち着いちゃいましたね。ちなみにはじめから見下ろし型でした。

「システム24の特色は画面解像度が496×384になってること。でもデザイナーは今までの解像度(320×224)で描いているから全体を見渡すことができない。だからゲイングランドの画面はデザイナーが考えたものではなく、こうなるだろうとプログラマーが予想したものを画面に出してみて、チューニングしていったものなんです。」

─  キャラクターのアクションもとても細かいですよね。槍(やり)を投げたら放物線を描いて飛んでいくし、キャラごとに利き腕(右利き、左利き)があるし……。これも企画段階からあったんですか?

■  スタッフに細かなことにこだわる者が多かったのが、このゲームに強く影響していると思います。

企画上では決めてなかったけど具体的にしていくごとに、例えばデザイナーが「投げるアニメーションと発射されたものがズレるのがイヤ」と言い出して絵ヅラあわせた結果ああなりました。

放物線は見下ろし型のため最初からプログラムされてましたが、システム24はセガ汎用ボードで初めてオブジェクトがまともに拡大表示できるようになり、それを大げさに演出したので目立ったのでしょう。
利き腕

利き腕の要素はゲーム性よりも見た目にこだわった結果生まれたもの。



開発スタッフインタビュー

トップページにもどる

“ゲームの神様”降臨