インタビュー・前川正人

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リプレイコミック「前川さんとガンスターヒーローズ」










─  トレジャーは「難易度」に関して、かなりのこだわりがあると思うのですが、難易度調整等はどのように行われているんですか?
■  トレジャーの作品は全体的に難しいなんて話も聞きますが、『ガンスター』に関しては、単純に「難しい」っていうのは違うと思うんですけどね。難しくないですよ。もしも難易度イージーで遊んで「難しい」と言ってるのだとしたら、ちょっとピンとこないですね。私はトレジャーのなかで、ゲームは一番下手な方ですが、『ガンスター』は余裕でクリアーできますから……。まぁ、エキスパートは厳しいですが……。

ただし、『エイリアンソルジャー』は、最初から「メガドライバーズカスタム」で作っていますので、あれを難しいというのは当然です。どこが「スーパーイージー」なんだ、と(笑)。ふざけるな、と(笑)。

……もしかしたら、難しいのではなくて、ゲームに不親切な部分があるのかな、と考えたことはあります。

たとえゲームオーバーになっても、次はなんとか行けそうだと思えば、ユーザーは難しいと思わないはずなんです。『ガンスター』では、ゲームオーバーになった時、コンティニューポイントはやさしめに設定されていますし……。イージーならば、コンティニューすれば、普通にクリアできると思いますね。

ちなみに、『ガンスター』は難易度を変更することによって、ボスの攻撃方法や変形パターン数が変わったりします。難易度を変更することで、敵の防御力がアップしたり、ダメージ量が変化したり……そのあたりのバランス取りだけじゃなく、難易度イージーだったら弾の吐き方をプレイヤーめがけて撃たなくするとか、凶悪な攻撃をしないようにするなど、そういう部分から調整しなくちゃならないんと思うんです。

……でも、どこまで調整できるかは、プログラマーのこだわりと、時間(締切)との戦いになるので、なかなか難しいものはありますよね。難易度調整にも時間はかけたいけど、それよりも全体の制作の方が先だし……。うーん、難しいですね(笑)。

また、エンディングまでのプレイ時間が短めなので、「ボリューム感がない」なんて話もあるんですが、これで本当にボリューム感がないのかな? って思うんですよね。100時間遊べるゲームと、ある種アーケードゲームのように30分気持ちよく遊んでもらう『ガンスター』のようなタイプのつくり方って、全く違うので、エンディングまでの時間だけを単純比較されても困るんですよ。特に営業等の方から、どんなゲームでも「このゲームはエンディングまで何時間?」って聞かれるのは、理不尽だと思いますね(笑)。

─  そういったいくつものこだわりこそが「トレジャーらしさ」だと思いますが、全タイトルを並べてみて、前川さんの考える「トレジャーらしさ」って何でしょうか?
ダイナマイトヘッディー

『ダイナマイトヘッディー』では、私はプログラムを担当していました。海外版を制作することになったのですが、米国ではゲームが簡単だと売れないという話で、「難しくしてくれ」と言われて喜んで調整したのを覚えてます。米国にはゲームのレンタル制度があって、レンタルでエンディングまでいっちゃうと買ってくれない…なんて言われて「本当かよ」と思ったんですが、難しくするならいくらでもやりましょうと、相当きつくしてみました。「難しすぎるから売れない」という話は聞くけど「簡単すぎるから売れない」…。セガ・オブ・アメリカの意向もあり、たぶん日本版の倍くらい難しいです。

アメリカと日本の、ゲームにおける難易度のとらえ方の違いについては「名作アルバム『エコー・ザ・ドルフィン』」長谷川亮一氏のインタビューでも触れられている。また「ガンスターヒーローズ」「ダイナマイトヘッディー」「エイリアンソルジャー」の3タイトルは、PS2「SEGA AGES 2500 Vol.25 ガンスターヒーローズ ~トレジャーボックス~」で、現在もプレイすることが出来る。(海外版も収録)
■  それぞれの作品は、それぞれのディレクターに権限を渡しているので、そのディレクターの個性がすごく出ていると思います。だから、トレジャーの全作品に通ずるものっていうのはピンとこないですね。

ただ、大規模なチームで作品をつくると、どうしても「丸いもの」になってしまう気はします。どうしても多数決的な意見のまとめ方で作っていく事になると思いますので。さらに、大規模なチームというのは、大きな予算をかける事になり、セールスを第一に考える必要が出てきて、これくらいのユーザーを対象にしたい、するとこの仕様は外せないな等、さまざまな「足かせ」が多くなってしまうと思いますね。

トレジャーの場合は、基本的にそういった「足かせ」はなく、好きなようにつくっています。ディレクターが「つくりたい」と言えば、「つくりたいものをつくればいいじゃん」と言っています。そういう社風というか、「自由に好きなものをつくっている感じ」が自然にゲームをプレイしている方に伝わったとしたら、それが「トレジャーらしさ」なのかもしれませんね。

……うちのつくりかたとして、ステージ毎に新しい要素(さまざまなギミック)をどんどん入れていく方法がありますが、それはユーザーを飽きさせないためにやっているんです。面をクリアする毎に驚いてもらえるんじゃないかなと思います。例えば、面構成としてはオーソドックスな1面で爽快感を感じてもらえたら、次の面からは、強制スクロールになったり、空中戦になったり、スゴロクになったり……。ギミックをどんどん追加して楽しんでもらう。基本的に、うちの作品はそういうのが多いですよね。これも「トレジャーらしさ」かな、と。……実は、このつくり方は、大変なんですが(笑)。

─  ちなみに『ガンスター』の開発終了後、そのチームはどうなったんでしょうか?
前川さん

私は、MD『マクドナルド トレジャーランド・アドベンチャー』からPS『シルエットミラージュ』までプログラマーもやってたのですが、今はトレジャー全作品のプロデューサーとしてやっています。……とは言っても、そもそもプロデューサーって何なんでしょうね?

私はディレクションはまったく行わず、それぞれの作品のディレクターにすべての権限を任せていますので、全タイトルのマネジメントはしますが、開発的にみれば…見たりプレイするだけ(笑)。作品に対して、強制的な変更をさせるような口だしは、ほとんどしません。
■  『ガンスター』と『マクドナルド』をアップ後、ラインを4本に分けまして、それぞれが以下のようなタイトルの開発をスタートすることになりました。

 『ダイナマイトヘッディー』
 『エイリアンソルジャー』
 『ライトクルセイダー』
 『幽☆遊☆白書 魔強統一戦』

特に、『エイリアンソルジャー』は、「NAMI」がデザイナー兼プログラマーで1人で開発スタート。当時、メガドライブのソフトは、デザイナー2人、プログラマー2人くらいの規模で開発していたので、「ひとりでも開発できるかな?」という甘い考えでスタートしたんですが、ちょっと無理でしたね(笑)。

「NAMI」はメガドライブが大好きで、うれしそうにタイトル画面に「メガドライバーズ カスタム」という言葉を入れていましたよ。独特で難しすぎると言われたタイトルですが、個性が出たタイトルだと思います。
エイリアンソルジャー

「ビジュアルショック!スピードショック!サウンドショック!」は、メガドライブ発売当初のキャッチコピー、“メガドライバーズ カスタム”「エイリアンソルジャー」。
─  ユーザーからのリクエストも多かったと思いますが、発売から長い間、続編が出なかった理由を教えてください。

■  まず、次々と新規企画があがって来るような状況で、続編を作る必要もないだろう、という時期が続いたというのがひとつ。ユーザーのみなさんから熱烈なラブコールもありましたが、私から「続編を作らない?」と言う事よりも、開発者が作りたい気持ちになる事が大切なんです。

ふたつ目の理由として、オリジナルスタッフを集めるのが難しかった、ということです。まったく違うものを作るのであれば、オリジナルスタッフにこだわる必要はないんですが、例えば「セブンフォース」は「NAMI」が作らないと、別物になってしまうと思いますので。

─  最後の質問です。前川さんにとって『ガンスターヒーローズ』とは、何ですか?

■  トレジャーの一番最初の作品でもありますんで、やっぱり思い入れの深い作品です。この作品がなかったら、今のトレジャーはなかったかもしれませんし……。トレジャーにとって、非常に大切な作品です。やはり、『ガンスター』は、トレジャーの代名詞的なタイトルと言えるのかもしれませんね。

でも、逆に、いまだにトレジャーと言えば『ガンスター』と言われるのは悲しい部分もありますね。トレジャーは、『ガンスター』だけじゃないんですけどね……(笑)。
前川さん

『ガンスター』の攻略本は発売されていないけど、ネットでコアなユーザーさんの攻略サイトがあるのはありがたいですね。


「職人集団」トレジャー

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おもいでがいっぱい(読者からの投稿メールより)