インタビュー・長谷川亮一

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今回の「名作アルバム」開発スタッフインタビューは、『エコー・ザ・ドルフィン』のローカライズを務めた長谷川亮一さんが登場。ローカライズすると、同じ『エコー』でもこんなに違う!? 『エコー・ザ・ドルフィン』には、ゲーム史上もっとも●●●●な大ダコが登場する!? こざかなはおいしい? などなど……

いま、すべてが語られる!

長谷川亮一 プロフィール

1992年入社。CS事業部で、MD『エコー・ザ・ドルフィン』『ナイトトラップ』など30以上の家庭用ゲームのローカライズ業務を担当。SS『バーニングレンジャー』やAC『デイトナUSA2』では、テーマ曲の英語詞の作詞なども行った。

セガ退社後、株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント入社。現在、制作プロデューサーとして、『ラチェット&クランク2』『ジャック×ダクスター2』など数多くのタイトルのローカライズを行っている。
長谷川亮一



「ローカライズ」という仕事

─  セガに入社してから、ローカライズ業務を担当されてきたわけですが、やっぱり英語はペラペラなんですか?

■  はい、おかげさまで(笑)

入社当時、会社の主催でTOEICという英語の能力検定試験があったんですが、確か935点でその回の社内1位でした。…実にイヤミったらしい言い方ですね(笑)

私の名前は長谷川ですが、アメリカに留学していた頃、ゲームセンターで親しくなった連中に、HASEGAWAの真ん中を取ってSEGAというニックネームで呼ばれてました(アメリカ人って4音節以上ある名前を発音するのが苦手なんですよ)。

帰国後、セガの入社面接を受けた時にこの話をしたのですが、どうやらそれがウケたのか採用してもらえました(笑)

─  最初に担当したタイトルは……?

■  最初は企画制作部というところで、翻訳の手伝いをしたり、いろいろなソフトのヘルプをしていたんですが、当時の副部長に「長谷川君、コレのローカライズやってみない?」と声をかけられまして、それが『エコー・ザ・ドルフィン』だったんです。開発はハンガリーのノボトレード(novotrade)という会社で、元々は欧米向けに開発されたゲームでした。

とにかく当時としてはものすごくきれいな画面のゲームだったので、その場で「ぜひ、やらせてください!」とお願いしました。
長谷川亮一さん

「セガチャンネル」のTシャツと、現在も会社で社員証入れに使用しているというセガダイレクトで買ったセガネックストラップ……セガ仕様で現れたSCEの長谷川さん。
─  作品リストを見せていただきましたが、長谷川さんは本当にたくさんのタイトルをローカライズしてきたわけですが、なかでも思い出深い作品ってどれですか?

■  『エコー』の他にも担当したタイトルはたくさんあるんですが、なかでも思い出深いのは欧米でしか販売されていないのですがジェネシス版の『Power Rangers(パワーレンジャー)』でしょうか。

任天堂さんの『スターフォックス』がFXチップを搭載して話題になった時のクリスマス商戦に、セガはこの『Power Rangers』を正面からぶつけたんですね。

当時ものすごい人気がありましたし、このタイトルは大成功を収めました。100万本以上を売り上げて、タイトルの制作会社の偉いお方に浅草で素晴らしい夕食をご馳走になりました(笑)

アメリカのデジタルピクチャーズ社が開発したメガCDの『ナイトトラップ』も忘れられない作品です。

ゲームシステムも斬新でしたし、他にも「内容が過激すぎる」という理由でドイツで発売禁止になったり(このニュースは日本でも一部の新聞で取り上げられたのですが、ゲームの説明が「下着姿で逃げ惑う女性達に襲いかかる」なんて書かれてました。そりゃ逆だぁ!(苦笑))と、何かと話題の多かったタイトルでした。

この時初めて吹き替え作業のディレクションをしたのですが、プロの仕事の素晴らしさを見せていただきました。(当時研究生として参加していただいた方も、今ではトップレベルの声優さんになられてるんですよね)

その後、私は『夢見館の物語』の海外版も担当することになるんですが、日本では『ナイトトラップ』と『夢見館の物語』のふたつで“バーチャルシネマ”というジャンルを作って売り込みをかけていたのも懐かしい思い出です。
MIGHTY MORPHIN POWER RANGERS

『Power Rangers』

アメリカで大ヒットしたテレビ番組。日本の戦隊ヒーロー作品「恐竜戦隊ジュウレンジャー」を元に、特撮パートはオリジナルの映像を使用し、ドラマ部分をアメリカの役者が演じている。その人気は高く、日本の戦隊シリーズ同様に現在もシリーズが続いている。

『ナイトトラップ』の台本

長谷川さん所有、メガCD『ナイトトラップ』のアフレコ台本。発売時には、漫画家の寺沢武一氏らを迎え、『夢見館の物語』と併せて浅草で「バーチャルシネマ上映会」なるイベントも開催された。
─  「ローカライズ」とは、どんなお仕事なんですか?

■  一番平たく言うと「翻訳」ですよね。海外ゲームの英語を日本語にする。あるいはその反対で、日本のゲームを英語化する。……ただ、それだけだと実は“translation”なんです。その後に難易度やキャラクターのビジュアルを海外向けに変えてみたり、さまざまな作業を含めて「ローカライズ」と言います。

有名な話ですが、『ファンタシースター』の日本版のパッケージの女性キャラはすごくキュートなのに、海外版になると「誰ですか、このおばさん!?」みたいな絵に変更されています。私たち日本人の感覚からするとまったく理解できないんですけど、やっぱり海外の市場に合わせてビジュアルを変えるわけです。

『エコー』のパッケージも海外版だと「オイラ、肉喰ってまーす!」みたいな凶悪な目つきのマッチョなイルカですが(苦笑)、日本版のパッケージではかわいらしいイルカに変えています。

─  ゲームの操作性などは、あまりいじらないのでしょうか?

■  そうですね。操作性に関しては、特にアクションゲームだと日本ではプライオリティの高いものとして扱われますよね。ところが海外ではかなり大味で、ボタンを押してからワンテンポ遅れて動くようなものもあったりしました。

なので、それをローカライズする時に「キーレスポンスを良くしてくれ」と言っても、もともとそういうつくりのものなので手を加えること自体が難しかったりするんですよ。だから、ドラスティックに日本版だけ改善される、というケースは少なかったですね。幸いなことに『エコー』ではそのような問題はありませんでしたが。

特に洋ゲーの場合、当時のユーザーさんはそういう大味なところも含めて“アメリカンテイスト”として受け入れて下さっていたのではないでしょうか(笑)

─  他にもローカライズに必要な作業ってありますか?
ファンタシースター 千年紀の終りに

PHANTASY STAR IV

ギャップの大きさでPSシリーズの中から、MD『〜千年紀の終りに』のパッケージイラストをチョイス。下が海外版……ど、どちら様でしょうか?
■  あとは表に出てこない部分だとカメラワークかな。海外のゲームはカメラの動きが激しいので、人によっては酔ってしまうこともあるんです。そういう時はスクロールスピードを変化させる、などして対処します。

それから倫理観の違いでグラフィックを書き換えることもあります。例えば『ファイナルファイトCD』で、日本版では道ばたにお酒のビンが落ちてるけど、海外ではソフトドリンクに変更されたりとか、道の脇でタバコを吸ってる奴のタバコがなくなったり、ニューハーフキャラのやられアクションで見えていた下乳がシャツが長くなって見えなくなったり(笑)

後は、“十字架”や“ダビデの星(六芒星)”など宗教的なシンボルは確実に描き換えられてますね。

─  そもそもなぜローカライズという作業をしなければならないんでしょうか?

■  言葉を分かるようにする、というのは当然として、先ほど説明したようにまずは日・米・欧でのグラフィックの好みですよね。まるで違いますから。

それから、やっぱり難易度も変えなくちゃならないですね。当時から良く「海外のゲームは難しい」と言われていますが、ただ難しいというだけじゃなくて、実は“exploration”に対する認識の違いという問題があるんですよ。

─  エクスプロレーション……?

■  アメリカやヨーロッパでは、ほとんど何も情報やヒントがない状態で何かを探し回るのが楽しいんですって。「あれも試した、これも試した、でも先へ進めない……あっ、これだったらどうだろう?……進めた、ヤッター!」という達成感。その“exploration”(≒探索、調査)自体をゲーム性として捉えているんです。

なにせ海外のユーザーは、なかなかクリアできない方がコストパフォーマンスがいいと思っている部分があって、買ってすぐにクリアできちゃうとメーカーが怒られるくらいですから(笑)

だけど、同じ“exploration”でも、日本だとヒントがないとゲームを投げ出してしまう人が多い。「ヒントねぇよ、何もねぇよ、わかんねぇ」とゲーム雑誌見たり、今なら攻略サイトで解答を見て「そんなもん、わかんねぇよ!」と結局、放り出してしまったり(笑)

……日本での“exploration”は、ストレスになってしまうんですね。だからナビゲーションや、ヒントの出し方も変えてあげなければならないんです。

長谷川さんがローカライズを担当した作品(日←→米)

[GENESIS(メガドライブ)]

・ecco THE DOLPHIN
・ecco THE DOLPHIN II
・Power Rangers
・SHINING FORCE 2
・Virtua Fighter 2

[GAME GEAR(ゲームギア)]

・Power Rangers
・G SONIC
・THE LOST WORLD
・TEMPO Jr.

[SEGA CD(メガCD)]

・NIGHT TRAP
・JURASSIC PARK CD
・ROBO ALESTE(電忍アレスタ)
・YUMEMI MYSTERY MANSION
(夢見館の物語)

[SEGA 32X(スーパー32X)]

・ステラアサルト
・メタルヘッド
・バーチャファイター 32X

[SATURN(セガサターン)]

・Baku Baku(ばくばくアニマル )
・NiGHTS
・SEGA RALLY Championship
・Shinobi Region(新・忍伝)
・THOR(レジェンド・オブ・トア)

[ARCADE(アーケード)]

・THE HOUSE OF THE DEAD
・DAYTONA USA 2

[PlayStation]

・クラッシュ・バンディクー3
・スパイロ・ザ・ドラゴン

[PlayStation 2]

・ジャック×ダクスター
・ラチェット&クランク
・怪盗スライ・クーパー

─ 他 多数タイトルを担当。



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