そんな折、1993年に日本で発売された、頭に5つの白い斑点を持つイルカ“エコー”が活躍する『エコー・ザ・ドルフィン』も、海外のソフトメーカーNOVOTRADE社開発・SOA発売タイトルのローカライズ版である。『エコー・ザ・ドルフィン』の画面写真が日本で初めて紹介された時には、その画面の美しさにユーザーも驚いたが、日本の開発者からも驚きの声があがった。
メガドライブの画面は基本的に「スクロール面(背景面)」が2枚と「スプライト(キャラクター)」で構成され、同時発色数は512色中64色となっている。その64色は「16色=1パレット」と括られて管理されるので、使用できるのは4パレットとなる。
各パレットには奥の部分を隠さないように“透明色”として1色使用されるが、一番奥のスクロール面の透明色だけは設定した色を表示できるので、実質61色で画面内の全ての絵を描くことになる。また、1セル(8ドット×8ドットで構成される画像データ)の中に2つのパレットを混同させることはできない、という制限もある。
パレットの振り分け例。当然実際はこんなに単純なものにはならない。
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4つのパレットの使い方を考えてみよう。2つの背景面にそれぞれ1パレット。敵キャラ用に1パレット、主人公キャラと得点等の表示系に1パレット…という使い方が基本的なものになるだろう。
敵と主人公のパレットを分けることの利点は、データ管理のしやすさに加え、あるパレットで描かれた敵が画面から消えた際にパレットの中身を変更し、別の色で描かれたキャラクターを登場させることで、全体を通して色の少なさを感じさせないようにできることである。
当然、色だけではなく一画面内で使用できるセル数にも制限がある(vol.7『ファンタシースター』参照。マーク3の解説であるが、基本部分は大きくは変わらない)。しかし『エコー・ザ・ドルフィン』の画面は、一見するとそのような制限などまるで存在しないかのような複雑で鮮やかな画面になっている。
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『エコー・ザ・ドルフィン』発売当時の日本は、クリスチャン・R・ラッセンの描く海をモチーフにした絵画・版画や、イルカを介在して心身の機能を向上させるイルカセラピー(Dolphin Assisted Therapy)など、海洋生物に関する話題が持ち上がり始めた頃であった。『エコー・ザ・ドルフィン』もこの波に乗り、ゲーム誌だけでなく一般紙にもたびたび登場することになる。
しかしキャラクターのリアルな動きやグラフィックの美しさに惹かれて『エコー・ザ・ドルフィン』を購入した人々の前に立ちはだかったのが、その難易度の高さであった。
メッセージは日本語に翻訳され、ゲームバランスも日本向けに調整されてはいたが、リアルゆえにクセのあるエコーの動作や、多くは語られないヒント、正確な操作を要求されるトラップなどは、同じアクションゲームでも、日本のメーカーのそれとはまるで違う“海外ゲーム”そのものであった。
発売当初は「ただイルカを動かしているだけで楽しい」といった、裏を返せば高い難易度を皮肉っているともとれる評価もされていたが、後にステージセレクトなどが可能な「デバッグモード」が公表されたため、誰でも先のステージを体験することが出来るようになり、改めて画面の美しさや意外なストーリー展開が支持を集めた。
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イルカ【海豚】
海獣。体はむつ形で前肢はひれとなる。群れをなして泳ぎ、おもに浅い海域に棲息しているが、大陸棚よりも深い2000フィートまで潜ることができるといわれている。
彼等は体から発するパチパチ、グーグー、コツコツ、キューキューなど多種多彩な種類の音を使ってコミュニケーションを行う。
また、バンドウイルカは、カチッという吸気音を連続して発し、その音波をソナーのように使いとても複雑な地形でも見分けることができる。これを称して「エコーロケーション」と呼んでおり、ゲーム中では、音波として表現されている。
(~座)アポロンがイルカの形で海から上がったという神話にちなんで、古代人はイルカ座を創った。イルカ座は、北の夜空に見ることができるイルカの形をした5個の星からなる星座。(取扱説明書より)
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