インタビュー・南 人彰

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進めていく楽しみと、進化させていく楽しみ

─  『アドバンスド大戦略』の企画は、どのように始まったんですか?

■  『スーパー大戦略』の後、『Beep』という雑誌との連動で『ムーンダンサー 妖精王の帰還』というRPGのヘルプに入ったんですが、半年後に部署が2研(CS8ビット機担当部署)と9研(CS16ビット機担当部署)に分かれてしまったんです。そんなこんなで開発もどうにも歯車が噛み合わず、それをきっかけに僕はもっといい企画を推したんです。それが『アドバンスド大戦略』の企画でした。

「大戦略」ならば、以前に売れている実績があるし、システムも確立している。『スーパー大戦略』は半年で完成したので、『アドバンスド大戦略』は1年もあれば大丈夫だと上司に言ったわけです。……で、実際には1年半くらいかかっているわけですが(苦笑)

─  『アドバンスド大戦略』シリーズは、なぜ第二次世界大戦がテーマなんですか?

■  『アドバンスド大戦略』には、“ゲームを進めていく楽しみ”と、“兵器を進化させていく楽しみ”があるんです。

ゲームを進めていく楽しみということから言えば、僕はシステムはつくれるけれど、ゼロからストーリーをつくるのが苦手なんですよ。その点、「第二次世界大戦」は人類が作り上げてきた歴史ですからね。最初から道筋は示されていますし、もしもドイツ軍が勝っていたら…などという「歴史のif」も盛り込むことができると思ったんです。

もう一点。第二次世界大戦では、1939年にはまだ複葉機が飛んでいて、1945年にはジェット機が飛んでいる。つまり“兵器の進化”がある時代なんですよね。

そういう意味でも第二次世界大戦を使わない手はないと思ったわけです。


─  “兵器を進化させていく楽しみ”を取り入れたのはなぜですか?

南さん

この悲劇が繰り返されないことを願って

「制作にあたって、当然スタッフ内でもヒトラーやカギ十字の扱いについての議論が持ち上がりましたが、どちらも『歴史上存在した事実』であり、それを改変することは逆に歴史に対する冒涜になるのではないか?、と説得し、取説にもそのことについてはちゃんと書くし、ゲームの最初にもきちんと入れるから…ということでタイトル画面の前にあのメッセージを挿入しました」
■  『スーパー大戦略』をやればわかるんですが、あるひとつのマップをやり終える頃には、例えば「F-15」という飛行機のユニットが成長して、いわゆる“エース”の部隊に達するんです。スペードのマークがついてね。「戦闘工兵」を猛烈に育てると、何が相手でも強いというくらいに育ちます。

……ところがですね、せっかくそこまで育てて勝利してもそのマップを終了したらそれで終わり。そのユニットは、そのマップ限りなんです。次のマップでは、また1からユニットを育てなきゃならない……。だから、そのユニットを次のマップに引き継げたらいいな、と思ったんです。

一方で、「F-15」を使い続けて、あるマップでエースの部隊になったら、次のマップからは成長がないわけですから、すぐに飽きちゃうなぁとも思っていました。育ちきったユニットを使っていると、「マップをクリアする楽しさ」はあるけれど、「ユニットを成長させる楽しさ」はないですよね。

システムソフトに『マスター・オブ・モンスターズ』というゲームがあったんですが、あのシステムのように「F-4」の経験値がたまったら「F-15」に、さらに「F-22」へと進化するのはどうだろうと考えたんです。……でも、ゲーム中の制御(しばり)を考えると、序盤で「F-22」まで進化するのは防ぎたい。一体どうすればいいのか……。

それで“西暦”を入れることを思いついたんです。1960年代だったら、まだ「F-4」しかないから「F-15」には進化できない…という具合です。
南さん

メガドライブ版「アドバンスド大戦略」のマニュアルを読み返す南さん。マニュアルは“兵器カタログ”を中心に大きく改訂され、第三版まで作られたそうだ。

「取扱説明書が箱に収まらなかったのは、分厚すぎたからです(笑)
すでに『スーパー大戦略』のときに限界で、あれは付属の兵器マニュアルの紙を薄くして、やっと箱の中に収まったんです。『アドバンスド大戦略』では100ページ以上の兵器カタログも書いたので、最初からパッケージに収まらないことがわかっていました」

─  なぜ日本でなくドイツが主役なのですか?

■  ドイツが始めた戦争だからという意味もありますが、ドイツの兵器がバラエティに富んでいて、大戦の最初から最後まで歴史に登場するのが大きな理由です。ドイツ以外だと、1939年~1945年まで戦い続けている国がまれなんですよ。

なぜ日本が主役ではないのかと言えば、日本のように軍艦がメインとなっているような国だと『アドバンスド大戦略』のシステムにマッチしないんです。このゲームでは軍艦は添え物的扱いなので……。

これらのことを総合的に考えて、ドイツを主役にしたんです。

豊富な兵器のバリエーション

豊富な兵器のバリエーションを持っていた当時のドイツ軍


ずーっと「大戦略」をつくっています

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マンガを読んだり、風呂に入ったり……