インタビュー・南 人彰

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マンガを読んだり、風呂に入ったり……

─  素朴な質問なんですが、タイトルはなぜ「アドバンスト」ではなく「アドバンスド」なんですか?

■  僕の英語の成績がですねぇ、自慢できるくらい悪かったからです(苦笑)
Advanced

[形] 高度な、進化した
■  その後、『アドバンスド ○○○○』という名前のソフトが何本か発売されましたけど、もしかするとそれは『アドバンスド大戦略』のせいかもしれません……。

─  『アドバンスド大戦略』といえば、“待ち時間”の長さも有名ですね……。

■  そうですね(苦笑)。あまりにもコンピューターの思考時間が長いので、マンガが一冊読めるとか、風呂に入ることができていい、とかいろんなことを言われたました。待ち時間の間に食事をしたり、洗濯をしたり、『アドバンスド大戦略』に生活のリズムを合わせて暮らしていたという人もいたと聞いています……(笑)

でも、PC版になって思考時間が短くなると、逆に「風呂に入る時間がなくなって困る」と言われてしまいました(笑)

─  あれ以上は速くならなかったのでしょうか。

■  まぁ、思考時間についてはあれが当時の限界ですね。あれ以上は速くならなかったです。昔、将棋のゲームでもずいぶん長時間待たされるものがあったけれど、『アドバンスド大戦略』の場合は64×64のエリアを最大で256個のユニットがサーチしていくので、やはりこのくらいの時間がかかってしまうんですよ。
南さん

「兵器の資料はもちろん原書なので、その国の言葉で読まなければならないんです。チェコ語とかロシア語とか……。辞書を引きながら読むんですが、そのうち辞書を引かなくても何が書いてあるのかわかるようになってきます(笑)」
■  ……もちろん思考ルーチンを弱くすれば、もう少しは速くなります。単純にサーチする回数を減らせばいいだけですから。でも、これでさえ弱いという人がいるのに、これ以上弱くすることはできないと思ったんです。

─  敵をある程度の強さにするためには、あの思考時間は必要なものだったんですね。

■  はい。ある程度の敵の強さを求めた時、待ち時間は30分くらいだったんです。これは長いなと思って、待ち時間を15分になるように調整したら、今度は敵が弱すぎる……。

それで僕は、どっちがいいか考えて、待ち時間が長くても敵が強い方を採ったんです。決していい長さだとは思っていません。つまり、思考時間の長さについては……あきらめました(笑)

─  何日もメガドライブの電源を入れっぱなしにしてプレイするユーザーもいたみたいです。

■  うん、案外大丈夫でしたよね。けっこう頑丈にできているなぁ、と思っていました。みんなでメガドラの耐久テストを始めたようなものですよね(笑)

─  ところで、モデムを使って対戦ができることは当時としては画期的でしたよね。

■  あれは僕の思いついたインチキだったんです……(笑)
敵思考中

敵思考中…索敵モードを「初級」以下にすれば、敵ユニットのひとつひとつが動く様子も見ることができる。当然その分、時間もかかってしまうが…
■  当初は4MのROMで開発を進めていたんですが、『アドバンスド大戦略』くらい膨大なデータを扱うゲームでは、4Mくらいだったらすぐになくなってしまうんですよ。

そこで「今まではモデムを使うことを考えていなかったので4Mだったんですが、モデムを使うことになったので、その分の容量が欲しい」と訴えて社内の承認をもらい8Mにしてもらったんです。……モデムに使う容量は少ないので、残った部分はまるまる他のデータを入れることができるというわけです(笑)

つまり、モデム対戦は僕にとっては二の次だったんです(苦笑)。実際にモデム対戦をしてくれるユーザーがいるわけもないとも思っていました。

……ただ、モデムを載せるとなったら、そんなこと言ってられませんから、いろいろとアイディアを出していったんです。

─  対戦以外にも、モデムを使用した新しい遊び方を考えていたんですか?
南さん

「容量が少なくなってくると、『南さん、ちょっとコンビニでROM買ってきてください』なんて冗談で言われて……結局、ジュースの買い出しに行かされるだけなんですけどね(笑)」
■  そうですね。僕が提唱したのは、日本各地から発信するシナリオダウンロードシステムです。

メガドライブと専用の電話線を日本各地のセガの事業所やゲームセンターに置いて、ユーザーさんがそこに電話をかけると各地域毎に異なる新規シナリオをダウンロードできるようにしようと思っていたんですね。福岡に電話をかければ“Aのマップ”が、札幌に電話をかければ“Bのマップ”が手に入るというわけです。

セガとしては、メガドライブ1台と電話線一本あればいいわけだから、すごく便利で安上がりなダウンロードシステムで、あの当時のアイディアとしては悪くなかったと思います。

……この構想が実現したら画期的なものになっていたかもしれないんですが、実際はさまざまな事情があって実現には至りませんでした。

僕はいつも、このようなインチキばかり考えていたんですよ(笑)
モデムモード

メガモデムを接続したメガドライブに直接電話をかけ、セーブデータの送受信が可能なモデムモード。マップを決め、交互に送受信を行えば、離れた相手との対戦も可能。


進めていく楽しみと、進化させていく楽しみ

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リプレイコミック「南さんとアドバンスド大戦略」