インタビュー:長谷川勝弘(ディレクター)

P1 - P2 - P3 - P4 

今回の「名作アルバム」開発スタッフインタビューは、マーク3版『SDI』のディレクターを務めた長谷川勝弘氏が登場。あの操作方法はどのようにして生まれたか、なぜフリッキーモードはマーク3版には存在しないのか?

いま、すべてが語られる!

長谷川勝弘 プロフィール

1984年プログラマとして入社。すぐに企画に転向し『ちゃっくんぽっぷ』や『ハングオン』などアーケードの人気作品を次々に移植。他にも海外向けMASTERSYSTEM用ソフトや初のカラー液晶ハンディゲーム機ゲームギア用ソフトの企画、ディレクションを20作品以上手がける。

その後、メガドライブ、セガサターン、ドリームキャストとセガ全ハードに携わり、現在はPC統括部でPC用ソフトのプロデューサーとして活躍中。

東京都出身。B型。
長谷川勝弘



“目移植”で作られた『SDI』

─  入社したときはプログラマーだったそうですね。

■  僕は84年にプログラマーとして入社したんですが、ソフト開発部というところで2ヶ月くらい研修している時に、宿題で企画書を書かされたんです。それで学生時代からあたためていた企画を持っていったところウケが良くて、部長さんから「企画をやってみないか」という話をいただいたんですね。それで企画課に移ったんです。

その時、企画課にいたのがむっちゃん(ファンタジーゾーン)や、オサール・コウタ(アレックスキッドのミラクルワールド)たちでした。

─  ディレクターになって最初の作品って何だったんですか?

■  はじめにアーケードのモトクロスのゲームを企画して、プロジェクトを進めていたけど、ロケテストでインカムが悪すぎてボツになりました。横浜でロケテしたんですが、1日で2、3人しかプレイしてくれなかった……。それが僕の最初の作品(笑)

長谷川さん

[長谷川さん秘蔵写真 その1]

当時の企画課の面々。一番右が長谷川さん。オサール・コウタ氏やむっちゃんの姿も。

■  ちなみに最初に製品になったのはSG-1000の『チャックンポップ』で、その後マーク3、ゲームギア、サターンなど、全てのセガハードで僕のディレクションした作品が世に出ています。

─  数多くの作品をディレクションしてるわけですが、今回は『SDI』に焦点を絞ってお話しを聞こうと思います。まず『SDI』をマーク3に移植しようと思った“きっかけ”は何だったんですか?

■  当時の社内の流れが、「セガから出たアーケードゲームはすべてコンシューマーに移植するゾ」みたいな風潮だったんですね。それで『SDI』を移植する順番がたまたま僕のところに回ってきた感じ。それだけです(笑)

─  アーケード版の特殊な操作形態、画面いっぱいに現れる数多くの敵キャラなど、移植に関しては、さまざまな困難があったと思うんですが……。実際に移植の作業って、どういう手順で行われていったんですか?

■  当時の移植って、(アーケード版の)ソースを解析して移植するってのは一切なくて、ホントに“目移植(め いしょく)”。耳で聞いたとおりに楽器を演奏したりする“耳コピ”っていう言葉があるけど、ゲームの移植の場合は“目移植”。目で見たとおりに再現していくんですね。

─  “目移植”について、もう少し詳しく説明してください。

■  うん。当時アーケードのゲームをコンシューマーに移植するとき、大抵は資料とか仕様書も何もないので、まずはアーケードゲームをやりつくすのが“目移植”における最初の仕事……(笑)。で、自分の机の横にアーケードの筐体置いて1日中ずーっとやってる。エネミー(敵)の出現位置とかアルゴリズムも、目で見て、メモして、再現していく。それで仕様書に落としていく。これが“目移植”。

─  なるほど。でも1日中ずーっと『SDI』ですか…(笑)

■  とにかく“目移植”するためには、エンディングまで見なければ話にならないわけ。だから1日中、机の横の『SDI』をやるわけなんだけど、やっぱり上司からは「なんでゲームばかりやっているんだ!」ということになるわけですよ。……話はそれますが、そこでちょっとした閃きがあって(笑)。ネームエントリー画面で名前を入力する時にAさんの名前を入れることにしたんですね。僕以外の人もみんな机の横には筐体があったわけだけど、ネームエントリーではAさんの名前を入れることにした……。それで、すべての筐体のあらゆるタイトルのハイスコアがすべて“Aさん”になって、それを見た上司が「なんでAはこんなにゲームばかりやっているんだ!」って。Aさんだけが怒られた(笑)。……そんなふうにしながら『SDI』は作られました。


長谷川さんがディレクターを務めたゲーム

[SC、SGシリーズ]

・ボンジャック

・ロックンボルト

[セガマーク3]

・テディボーイブルース

・ファンタジーゾーンII
 オパオパの涙

・忍 SHINOBI

[MASTERSYSTEM]

・Golden Axe

・Altered Beast

・Ghouls and Ghosts

[メガドライブ]

・北斗の拳
 -新世紀末英雄伝説-

[ゲームギア]

・アックスバトラー
 ゴールデンアックス伝説

・アイルトンセナ
 スーパーモナコGP2

・ソニックドリフト

・The GG忍

・ガンスターヒーローズ

[セガサターン]

・電脳戦機バーチャロン

─ 他 多数タイトルを担当。


長谷川さん

[長谷川さん秘蔵写真 その2]

1992年、ゲームギア版『アイルトン・セナ スーパーモナコGP2』制作中に来日した故アイルトン・セナ氏と長谷川さん。


ストーリー・作品解説

トップページにもどる

企画の人間がクリアーできないゲームを、世に出すのか!