名作アルバムVol.3:フリッキー


Page : 1 _ 2 _ 3 _ 4 _ 5 _ 6

■川崎さんのこだわり

―― これはインストラクションカードですよね。しかも直筆!

川崎■この『フリッキー』のインストラクションカードは1日で仕上げたものです(笑)。当時は社内にカラーコピー機もなかったから、わざわざJR蒲田駅前の印刷会社までコピーをとりに行くんです。ここはナムコも使っていましたねぇ。

―― あ、なにかがおかしいと思ったら、タイトルが……。

川崎■ふふ、よく気付きましたねぇ。これはよく見ると『FLIPPY』になっていますよね。アメリカで商標の問題でNGが出て、語感で『FLICKY』に変更になったんです。

―― はぁー、なるほど。

川崎■ネーミングがらみの話でいえば、蒲田のセガ直営のゲームセンターの名前が「フリッキー」になったこともありましたね(笑)。

―― おぉ、それはスゴイ(笑)。
 川崎さんは『フリッキー』以降はどんなゲームのデザインをしていたんですか?

インストラクションカード

『フリッキー』のインストラクションカード。
 よく見るとタイトルが『フリッピ-』に……。

川崎■『フリッキー』の後は『チャンピオンボクシング』(*1)や『忍者プリンセス』(*2)のデザインをしました。ちなみに『チャンピオンボクシング』はSG版の出来が良かったので、アーケードに逆移植したんです。工場でロムを製品化するのに3ヶ月くらいかかるのでアーケードの方が先にでたかもしれませんが。

―― またもや歴史が上書きされました。『チャンピオンボクシング』はアーケードに逆移植、と。メモしておきました!

川崎■余談ですが私は、キャラクターを“殺す”事が嫌いなんです。一貫してプレイヤーは死なない、ENEMY(敵)もそうです。だからENEMYもプレイヤーもどうやってやられるか、その“消し方”にこだわりました。フリッキーも死んだりしないし、忍者プリンセスも手裏剣や刀で切られても死ななくて、確か座って泣いてますし、敵の忍者や悪玉ボスも実は死んでない。クリアすると最後は舞台でくるみ姫とみんなで踊ってるんです。

―― 言われてみれば、なるほどそうですね。

川崎■その頃のゲームセンターのイメージが悪くて、死ぬとか、殺すとかそういう要素を排除して『フリッキー』を出したんです。その後につくった『忍者プリンセス』や『三輪サンちゃん』(*3)もみんな同じイメージです。
 みんなが親しみやすい世界にしよう。セガだって可愛いゲームを作れるんだぞという気構えでした。


―― そこに川崎さんのこだわりがあったんですね。
*1)『チャンピオンボクシング』

サイドビューのシンプルなボクシングゲーム。プログラムは鈴木裕氏。アーケード版。SC/SG版。ともに1984年発売。

*2)『忍者プリンセス』

くるみ姫が8方向手裏剣や忍術を使って、敵を倒していくアクションゲーム。アーケード版は1985年、MK3版はその翌年に発売。


忍者プリンセス

▲敵忍者の手裏剣が当たり、泣き出してしまう『忍者プリンセス』の主人公くるみ姫。

*3)『三輪サンちゃん』

三輪車に乗ったサンちゃんを操作して、迷路(全100面)のなかの花をとっていく。アーケード用。1984年発売。

■これも川崎さんのデザインだ!

今回のお話に出てきたゲームのキャラクターはもちろん、セガのカレンダーや暑中見舞い、年賀状なども川崎さんがデザインしている。

ゲームズ博士 シンドバッド サンちゃん くるみ姫 セガの年賀状
ゲームズ博士 シンドバッド サンちゃん くるみ姫 セガの年賀状

ちなみにゲームズ博士は川崎さんがCAIという教育用コンピュータの取扱説明書のために描いたもの。いつのまにやら全機種用のゲームの取扱説明書でアドバイスをしていたらしい。ちなみにモデルは特にいないとのこと。

前に戻る 次に進む


記事の一覧