名作アルバムVol.3:フリッキー


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川崎吉喜 (かわさき・よしき)
お客様相談室システム運営チーム所属。1976年入社。

研究開発デザイン課にて、『フリッキー』『忍者プリンセス』『三輪サンちゃん』などのデザインを手がける。その後、宣伝部を経て、お客様相談室へ。

A型。長崎県出身。
川崎吉喜

■セガ入社から『フリッキー』まで

―― 川崎さんはセガに入社して20年以上になるベテランなわけですが、入社するきっかけがあったら教えてください。

川崎■失業中で家の近くの会社を探していたんです。大森にある会社と大鳥居(*1)のセガのふたつを紹介してもらいました。私は糀谷に住んでいて大森に行くのは面倒だったので、隣りの駅(大鳥居)のセガに決めたんです。

―― 簡単な理由なんですね(笑)。当時のセガはどのような会社だったんですか?

川崎■当時のセガはまだジュークボックスやフリッパー(ピンボール)が主だったと思います。
 その頃まだTVゲームが出る前ですから、デパートの屋上の片隅とか、スナック等のお店に機械が置かれてましてゲームセンターは少なかったですね。


―― 川崎さんもそういうところで遊んでいましたか?

川崎■昔の日比谷映画館の脇に薄暗いゲームセンターがあってフリッパーや、ドライブゲームをしてました。
 入社してからは『ヘッドオン』(*2)
が大好きで、延々とやっていました。
 随分と注ぎこんだ気がする(笑)。……1時間くらいやってても、終わらない。もうだんだん飽きてきちゃって、ここらでいいかなって思うところでやめる。そういう単純なゲームが好きなんです。


―― セガには最初からデザイナーとして入社したんですか?

川崎■入社した時には、資材部に配属されたんですが、1983年当時はコンシューマーを立ち上げたばかりで、開発要員が足りなかったんです。
 それでデザイナーも不足していて、私が昔から絵を描いていたことを佐藤さん(現社長)が知っていたので研究開発部デザイン課というところに移動したんです。


―― はじめにデザインしたのは、なんというゲームですか?

川崎■まずはじめにSG-1000の『ゴルゴ13』をやりました。徹夜続きで、ウトウトしながらドットを打っていましたね(笑)。そして次は『アルベガス』。弾を作るだけだったので簡単でした。……LDゲームだったからキャラや背景は描く必要がなかったんですね。そしてアーケードの『シンドバッドミステリー』を作ったんですが、Z80のボードだったのでキャラの容量が少ない。で、次は「もっと面白いものつくろう」ってことで、企画担当者が次の企画書を作ってきたんです。A4で1枚くらいの(笑)。

―― それが『フリッキー』だったんですね。

川崎■そう。迷路上のドット取りゲームだよと言うんです、本当に簡単な企画書で、「線(迷路)が入ればいいから、あとは簡単なキャラクターがあればいい。バック(背景)は何も無い黒でいいよ。」って、その程度ですよ、あははは。

―― それじゃあその時はまだ、母鳥とヒヨコの関係とか、ゲームの設定すらなかったんですね?

川崎■その何年か前に電線音頭(*6)って流行ってたじゃないですか。「♪電線にスズメが3羽とまってた」っていうやつ。
 それで主人公は電線を移動するスズメにしようって決めました(笑)。
 実はフリッキーはスズメなんです。飛べずに電線を移動するスズメなんて変でしょ? でも、けなげに飛ぶ姿が好きなんですよ。


―― フリッキーってスズメだったんですか(笑)。ずーっとピヨピヨ(ヒヨコ)の母鳥だと思っていましたが……。

川崎■SG-1000版の説明書にはピヨピヨたちの「母親」みたいなことが書いてありますが、実は違うんです(笑)
 説明書ができて、今更フリッキーはスズメです。なんて言えなくなって……。
 もう、キャラクターが一人歩きしてしまって、まっ、いっかぁ〜って感じで黙っていたんです。
 フリッキーはピヨピヨの母鳥ではなく、お友達、なんです(笑)。


―― そうだったんですか……。18年目にして初めて明かされるフリッキーの真実ですね。

川崎■まぁ、遊んでいる人が、フリッキーは母鳥と思ってるなら、それはそれでいいし、ビジュアル優先で青いスズメにしたので、そう思ってしまうのも無理からぬことだと反省してますが、ゲームキャラは自由な発想の方がおもしろいので。

―― 今、セガの歴史が確かに上書きされました(笑)。これからはフリッキーはスズメ。ピヨピヨのお友達として紹介させていただきます!
川崎さん

▲いろいろな資料を机の上に広げて、当時の様子をゆっくりと話しはじめる川崎さん。

*1)大鳥居

セガ本社の最寄駅は京浜急行「大鳥居駅」。羽田空港の近く。ちなみに糀谷までは乗車時間にして2分、大森までは6分。どちらもそれほど遠くない。


*2)『ヘッドオン』

画面上の点をすべて消していくドットイートタイプのゲーム。敵車にぶつからないように、自車を動かしコース上の点を取っていく。1979年発売。

ヘッドオン

*3)『ゴルゴ13』

さいとうたかをの同名マンガをゲーム化。主人公デューク東郷が走る列車の窓を狙撃するシューティングゲーム。SC/SG用。1984年発売。

*4)『アルベガス』

合体ロボのアルベガスを操作して敵を倒すLDゲーム。LDゲームというのはレーザーディスクを使用したビデオゲームのこと。1984年発売。

*5)『シンドバッドミステリー』

シンドバッドを操作して、立体迷路のどこかに埋められた宝を掘り当てるアクションゲーム。アーケード版。SC/SG版。ともに1983年発売。


*6)電線音頭

1977年。テレビ朝日「みごろ!たべごろ!笑いごろ!」で小松政夫と伊東四朗が「♪電線にスズメが3羽止まってた」と歌って踊りまくり、大ヒットした。

ゲームズ博士

SG版『フリッキー』の説明書より。
 確かに“フリッキー母さん”という単語をみることができる。

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