インタビュー・大場規勝

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すべては“計算ずく”

─  大場さんはディレクターということですが、具体的にはどんな作業をしていたんですか?

■  企画、システム、絵もどんな背景にするかなど、全部。基本的に企画は1人ですから、端から端までやらなくちゃ(笑)。

─  その中でも一番こだわりを持ってつくったのは、どの部分ですか?

■  『ザ・スーパー忍』は2Dのアクションゲームということもあり、やはりプレイヤーキャラであるジョー・ムサシのアクション、それからゲームバランスはかなり練り込んだつもり。
大場さん

「“忍”の文字は、メインデザイナーが書きました。小さい頃、お習字をやっていたというので(笑)」
■  2Dのスクロールアクションって、ジャンプがとても重要で、ジャンプにもバリエーションがあった方がゲームに深みが出てくる。だから、二段ジャンプ(八双飛び)は最初から入れようと思っていたんだよね。

でも、それがあっただけじゃあまり意味がなくて、多重スクロールの特性とうまく組み合わせて二段ジャンプで手前と奥を行き来できるようにしたのね。つまり2Dゲームで“高さ”だけじゃなく、“奥行き”も表現した……これは多分それまでになかった遊びだったと思うんだよね。

─  ゲームバランスも、難しいことは難しいんだけど「がんばればクリアできる…かな?」っていう感じでしたね。
大場さん

八双飛びで画面の手前と奥を行き来する6面。手前にいれば車に轢かれることはないが、先へは進めない
■  実は全部シミュレートしてあるんです。

もっとも、上手いプレイヤーの場合、「ここまで来るのに何点とって、ライフメーターがどこまで伸びているか」とかはわかっている。マップがあれば、アイテムの配置も決まっているし、敵の数も有限なので、紙の上でもシミュレートできるんです。

もちろん実際にプレイしてみて難しいところは、敵の数を間引いたりして調整していくんですが……。

─  大場さん、クリアできました?

■  当時はもちろんノーミスクリアできましたよ! ちなみにタイトル画面後のデモプレイは4種類あるんですが、それは僕のプレイです。

─  「八双手裏剣」とか「微塵の術」みたいな強い技もありましたよね。
8面前半

いてほしくないところにしっかり敵がいるのもシミュレートの賜物
■  自分がうまくなって斬ったり蹴ったりして倒せば、その先が楽になっていくんですね。手裏剣がストックされていくので。でも、手裏剣を使いまくることで苦手な敵を撃破して先へ進むことができる。まだヘタだけど、その先に行きたいプレイヤーは、「まず“八双手裏剣”を使ってみてください」、と。これをプレイヤーの一段目の逃げ道と考えていたんですね。

で、二段目の逃げ道として用意したのが“術”。手裏剣でも敵を倒せなかったら「“雷の術”や“火龍の術”といった術を使ってください」、と。それでも倒せない場合は、「“微塵の術”を使えばいい。……それだったら次へ行けるでしょ」、と。そういう考え方で手裏剣と術もバランスを取っていきました。

あくまで手裏剣の数が無限になるのは裏技ですし、まぁオマケですよね。三段目の救済措置というか……。

─  「微塵の術」のアイディアはどこから生まれたんですか?

■  僕のボツになったゲームの企画の中に「ワンダウンコンティニュー」というアイテムがあったんです、アルファベットで書くと「1 DOWN CONTINUE」。自機を1機失ってしまう代わりにその場からコンティニューができるようになる、という効果のアイテムですね。そのアイディアが面白かったので、『ザ・スーパー忍』で「微塵の術」として使用することにしたんです。

アーケードではコインを投入すればその場からコンティニューができるものも多かったけど、コンシューマーでは当時「その場コンティニュー」というものがなかったし、でも機械的にただコンティニューができるんじゃ面白くないので、きちんと設定に合わせて創作したのが「微塵の術」ですね。

─  ボスは「微塵の術」を何発か当てて倒すという力技でクリアしたりしました……。
八双手裏剣

火龍の術

微塵の術

これらは“救済措置”だった!?
■  ただ、それは最初からそういうことを想定した上でバランス取りをしてあるんですよ。

例えば、7面の古代怪獣は微塵の術3発で倒すことができる。だから、「そこまでに分身が4人いる状態だったら、ここはクリアさせてやるぞ」、と。そう思ってつくっているわけです。

あ、ちなみに古代怪獣はスクロール面ではなくスプライトで表示しています。実はもう一枚スクロールを入れようというアイディアもありました。一番手前にオリを描けば4枚になるだろう、と。でも、怪獣が見えにくくなるのでやめました(笑)。
古代怪獣

耐久力が高く、不用意に近づくと尻尾でも攻撃してくる古代怪獣。頭が弱点だ。
─  ははは(笑) しかしすごいですね、(プレイヤーの残り人数など)そこまで想定されていたんですか……!

■  うん。ボスキャラにもそれぞれ攻略法をつくったし、爆弾を投げるやつなんかもいやらしい所に配置している。そういう意味でも一から十までカッチリとつくったアクションゲームなんです。

例えば、「火龍の術」も「微塵の術」も、どちらも攻撃力が“8”なんですね。ただし、微塵の術は“8×1”のダメージを敵に与えるけど、火龍の術は“2×4”のダメージを敵に与えるのね。だから、2面のボス・シャドーダンサーなんかは「火龍の術」が有効、というわけ!
シャドーダンサー

火龍の術で、シャドーダンサーの分身を一気に倒せ!


『ザ・スーパー忍』制作スタート

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変更された敵キャラクターの話