インタビュー・小玉理恵子

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“王道”のウラをかけ!

─  小玉さんは『ファンタシースター』のどの部分を担当しているんですか?


■  『ファンタシースター』の時は、純粋にデザイナーとして参加しています。キャラクターデザインの他に、3Dダンジョン以外の2Dのマップと戦闘シーンの背景画、街の人などは私が描いたものです。

─  マップを描く上で、こだわった点はありますか?

■  「動きのあるマップ」にしようというコンセプトがあったので、マップの海の部分もよく見てみると動いているのがわかるし、街と街を結ぶ遊歩道なんかも動いてます。

でも、そのぶん街の中の人が歩かなくなっちゃったんですけど……(笑)。

─  アリサ、ミャウ、タイロン、ルツの4人のプレイヤーキャラクターは、それぞれどんなイメージでデザインされたものなんですか?

■  では一人ずついきましょうか。

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アリサ
主人公のアリサは、生真面目なタイプと思われがちですが、復讐の旅に行くくらいだから前向きで情熱を持っている女の子なんです。

だけど“女の子らしさ”を忘れないようにしてデザインしました。


小玉さんが担当した絵の数々

小玉さんが担当した絵の数々。波打ち際のアニメーションや、広角レンズで捉えたような戦闘背景など、斬新な表現も多かった。
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ミャウ
ミャウは、単にマスコット的存在というわけではなく、シナリオの最後で関わってきますし、物珍しさだけで猫をパーティにいれたわけではありません。

…ミャウをデザインしたのは、ちょう子ちゃんだったかな。


ちょうこお姉さん

ゲーム中にも登場し、プレイヤーを励ましてくれるちょう子お姉さん。
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タイロン
タイロンは、ヒロイックファンタジーの筋骨隆々の肉体派の男の人を作りたかったんです。バトルだったら、力技系担当。

でも、いわゆる“ガハハ系”の頭の悪いキャラではなくて、気持ちの優しい仲間想いの男らしいヒーローですね。


[タイロンこぼれ話]

「…でも、私が『マッチョな男なんて描けるかぁ!』と言って…タイロンは初代ソニックをデザインした大島さんがデザインしています。当時は、こういった筋骨隆々の男性は趣味ではなかったので(笑)」
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ルツ
ルツは、陰があるとか暗いとかじゃなくて、仲間をすごく大事にする人だし、信念とか誇りを持って厳しい修行をしている人です。

他の3人が“動”のキャラクターであるので、“静”のキャラクターも欲しいなと思ってデザインしました。


企画の最初の段階では、アリサは行動によって、女の子っぽくなるか、男の子っぽくなるか、ユーザーの遊び方でパラメーターを変化させようという構想がありました。そこでルツは両性具有の魔法使いで、アリサの成長によって、男性型になるか女性型になるかを決めようという話がはじめにあったんです。

だからルツは比較的、中性っぽいイメージにしようと思っていましたが、その後今の形の男性キャラということで落ち着きました。

─  当時、女の子が主人公のRPGって、珍しいですよね。

[ルツこぼれ話]

「ルツに関しては、実は単に美形が描きたかっただけだったかもしれませんね(笑) ローブを羽織った美形の魔法使い…老人ではなくて若い人…そんなイメージが頭の中にあったので、アリサは決定までに10パターンくらい描いたのに、ルツは最初から決定稿に近いイメージで描くことができました(笑)」
■  そうですね。誰もがRPGを作るのは初めてという状態に近いので、手探り状態だったんです。しかし、当時は非常に挑戦的で、“王道”の裏をかいて裏をかいて作っていったんです。

例えば、「3DダンジョンのRPGがコンシューマーには他に見当たらないからから3Dダンジョンにしましょう」とか、「戦闘シーンも他のRPGではモンスターが動いてないから動かしましょう」とか。常に逆を行く感じ。

それで、主人公も『ファンタシースター』は女性でいこう、ということになったのかもしれません。当時のRPGの主人公は男性ばかりでしたから。

─  モンスターも小玉さんがデザインしているんですか?

■  当時の4メガはかなりの大容量で、大きなプロジェクトだったので、とてもひとりではできませんでした。モンスターは他の方が描いています。

─  『ファンタシースター』のモンスターは、それ以降のシリーズのモンスターと随分毛色が違いますよね。

小玉さん

「ドラクエはイマジネーションを大切にしていたゲーム。登場するモンスターは動かないので、その動きをプレイヤーの想像に任せていたんですね。でも、『ファンタシースター』はそうじゃないんだ、と言いたかった。マーク3はファミコンよりちょっと上のグラフィックを表示できたので、それを活かしてモンスターも動かすことにしたんです。」
■  それはデザインをした人の趣味なんです。モンスターを担当したデザイナーはファンタジックなものに造詣が深くて、ベーシックなファンタジーのモンスターが大好きだったんです。だから、メデューサとかゴーレムなども登場するんでしょうね。

─  戦闘シーンで敵モンスターがアニメーションすることも話題になりましたね。

■  そうですね。しかし、そのアニメーションに割ける容量は少ないので苦労しました。

例えば「ゾンビ」は攻撃してくる時にゲロを吐くんですが、容量が足りないのでたくさんのモーション(動作パターン)を作ることはできないんですね。

その結果、出したゲロが地面に着くと、今度はゲロが戻っていくんですよ。まるでヨーヨーみたいに(笑)。
あれはみんなで大爆笑しましたね。


攻撃をしてくるゾンビ

ゲロがない状態での口の開閉パターンを入れる容量の余裕がないため、やむなくゲロを飲むゾンビ。



『ファンタシースター』制作スタート

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リプレイコミック「小玉さんとファンタシースター」