『獣王記』 は 「システム16」 と呼ばれる 「大きな絵を出すことができる機能を持つ」 基盤で制作していたので、まずは画面いっぱいの変身シーンをドーンとつくったわけですよ。この変身シーンを中心に 『獣王記』 の世界観を構築していこう、と考えたんです。だから、開発が始まって最初の一ヶ月間は、私はデザイナーといっしょに二人三脚で狼の変身シーンだけをつくっていたんですよ (苦笑) 。おかげさまで本部長にも 「これなら映画に勝てる」 という言葉をもらって (笑) 、世の中にセンセーショナルなものを出せるという自信が生まれました。
——今回、その 『獣王記』 をリメイクすることになったのは、どのような経緯があったのでしょう?
内田■ ひとつの理由として、アクションゲームの題材を探した時に 『獣王記 (Altered Beast) 』 は海外で高い評価を得ていたことが大きいですね。Genesis (海外版のメガドライブ) に同梱されましたし、そのパッケージにも 『獣王記』 のイラストが印刷されていたんですよ。
それと 『ハウリング』 からだいぶ経ってから 『インビジブル』 という映画を観たんですね。この映画で最も衝撃的だったのは、体の内部組織が徐々に透明化してゆくプロセスを非常にディテールにこだわって表現していた部分です。
……ここまで変身のディテールにこだわった映像をつくれば、ゲームでもまた新しい変身の表現ができるんじゃないかと思いました。実は、前作の 『獣王記』 を開発した時から、何か新しいアイディアがあればもう一本 『獣王記』 をつくるのも面白いなと思っていましたので、すぐに 『獣王記 -PROJECT ALTERED BEAST-』 の仕様書を書き始めたというわけです。もちろん変身シーンから (笑) 。
——かなり変身シーンには、気合いが入っているようですね。
内田■ たった5秒間の変身シーンに対して、どれだけのものを詰め込めるのか。例えば、昔の 『獣王記』 でもそうなんですが、アドバタイズデモでドーンと目の部分だけが大きくなるんですね。それは "目" 自体がショッキングだっていうのがわかっているから目をクローズアップしました。残酷というより、ショッキングでディテールにこだわった表現をやりたかったんです。
……この変身シーンはアメリカでかなりウケがいいですよ。気合いを入れて仕様書をつくった甲斐がありました。
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