2004年9月9日に発売されたPS2『どろろ』の発売を記念して、
現場ディレクターの開発秘話から、手塚プロダクション局長による
漫画『どろろ』のお話まで、2週に渡ってお届けします。
第1週の今回は、今枝賢一ディレクターが登場です。

今枝賢一 (いまえだ・けんいち)
『どろろ』 ディレクター

1993年セガ入社、第一AM研究開発部に所属となる。企画としてAC 『ゾンビリベンジ』 を担当後、AC 『スポーツジャム』『ダイナミックゴルフ』、Xbox 『segaGT2002』 など数多くの作品を手がける。PS2用ゲームとしては、『どろろ』 が初めてのディレクター作品となる。
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 第1週 ディレクター 今枝賢一   第2週 

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 ゲームという舞台で新しく生まれ変わった 『どろろ』。
日本が世界に誇る漫画家、手塚治虫氏のこの作品をアクションアドベンチャーに仕立て上げた今枝賢一ディレクターに、アクションゲームとしてのこだわりはもちろん、主人公・百鬼丸に対する想いや、漫画では未完に終わってしまった結末についてなど、語っていただきました。

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——数ある手塚作品のなかから、なぜ『どろろ』をゲーム化したんですか?

今枝■ 2002年にセガが手塚治虫キャラクターのゲーム化権を取得(※1) したので、僕も手塚キャラを題材としたゲームの素案を作ることになりました。手塚キャラオールスターとかいろいろ案もあったのですが、そのなかで、原作の設定を思う存分活かすことのできるゲームを考えた時、それが 『どろろ』 だったんです。

※1:手塚治虫キャラクターのゲーム化権を取得……ニュースリリース・セガ、手塚治虫キャラクターのゲーム化権取得(2002年5月17日)

——原作の設定を活かすというのは?

今枝■ 手塚作品はメッセージ性が強く、キャラが個性的ですよね。だから、新しく解釈してゲームとして作り直すのがちょっと難しい。
その点、『どろろ』 の主人公である百鬼丸は、どろろがいて初めてキャラが立つような存在だったので、僕たちの入り込む余地があったんです。

『どろろ』 の主人公、百鬼丸は運命に翻弄されて戦いはじめたけど、もともと自分の強い意志や感情で戦っているようには僕には思えなかった。だけど、どろろが絡んでくることによって初めて百鬼丸に感情や心が芽生えてくるように思えたんです。



イラスト/沙村広明

……そういう意味で、百鬼丸は未完成な存在なのかな、と。でも、未完成な存在だからこそ、なんだかんだ言える余地が残っているでしょう? 十人いたら、十通りの百鬼丸の解釈ができるわけです。今回は、沙村先生に大幅にキャラクターをリメイクしていただきましたが、百鬼丸のクールさが全面に出た解釈をしてくださいました。

さらに、百鬼丸には 「魔神に奪われた48の部位 (体) を取り戻す」 という目的がありますよね。だから、48の部位を取り戻していくことで、百鬼丸自体がパワーアップしていくというアドベンチャー要素が最初からあったわけです。

——アドベンチャー部分の物語も、手塚先生の原作に忠実なんですか?

今枝■ みなさんご存じの通り、原作である漫画の 『どろろ』 は未完で終わっています。しかし今回ゲーム化するにあたり、セガとしての回答を用意しなければ!と思いました。……基本的には原作の 『どろろ』 をなぞっていますが、きっちりと物語に決着をつけています。

——原作にない部分のストーリーは、あらためて創作したんでしょうか?

今枝■ 原作で、その後の展開をにおわせているシーンや自分たちからは消化不良に思えた部分があったんです。それらをふくらませてストーリーをつくっていきました。だから、原作をよく知っている方にも、違和感を感じることがないストーリーができあがったはずです。

沙村先生も、もともと原作のファンだったこともあり、かなり力の入ったストーリーボードを描いてくださったと思います。原作の設定やストーリーをいかしながら、いまの時代にしかつくれない 『どろろ』 をあたらしく作り上げることができました。

反面、原作にあるような 「憎しみ」 など情念のドロドロした部分や、「親が子を売った」 ような設定は、今の時代のゲームとして、取りあげることは避けることになりました。ですので、百鬼丸と父親との関係も少し変わってきています。

——原作では、魔神は48体登場しませんが、ゲームは登場しますか?

今枝■ もちろん登場します。それぞれの魔神に、バリエーションが欲しかったので、かなりの数の魔神を前田真宏先生に描いてもらい、その中から48体を選んだんです。魔神以外にも巨大なボスたちや道中の妖怪などもいるので、合わせて百体以上のデザインをお願いしました。前田先生も 『どろろ』 が好きということでノリノリで描いてくれたんですが、その時期、前田先生を拘束するのは業界的にはとんでもないことだったみたいです…… (汗)。


——今枝さんおすすめの魔神など、ありますか?

今枝■ 魔神ではないんですが、タタリという妖怪がいるんです。開発中に、デカい方がいいよねってノリでつくったら、最初はデカすぎてゲームにならなかった(苦笑)。

だけど、カメラの設定など工夫しながらつくっていくことで、最終的には大きいタタリと、人間の大きさの百鬼丸を対比させながらバトルを描くことができました。このシーンにはとても満足しています。だから、タタリがオススメですね。そのデカさを感じてほしいです。

——(美術)設定は、雨宮慶太さんですね。

今枝■ はい。雨宮先生に最初は柱とかギミックものを中心にちょこちょこと仕事を頼んでいたんです。しかし、なにしろ筆の速い方で、頼むとすぐに大量の絵が仕上がってくる。作業しているところを見たら、たいていのデザイナーはやる気をなくすくらい速い (笑)。最終的には、ほとんど (美術) 設定をやってもらっていたというわけです。

原作:(C)手塚プロダクション (C) SEGA, 2004 Character Design:(C) RED
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