ディレクター 大崎 誠
大崎■ 『バーチャファイター』 の 『1』 や 『2』 が初めて登場したときの衝撃を覚えていますか? ポリゴン自体が目新しくて、ボタンも3つで遊びやすい……。いままでのゲームセンターのユーザー以外の方々をも取り込んで、ちょっとした 『バーチャ』 ブームになりました。でも、そのころから10年経過したということは、若い人は当時の衝撃を知らないでしょう。『2』 が出たのが僕が25歳のときだったわけだから……。
▲ アーケード 『バーチャファイター』 (1994年)
ゲーム自体も、シリーズを重ねるごとに、システムが追加され、ユーザーがだんだん上手くなっていって、その反面、新しいユーザーが入り込みにくくなっていく。ユーザーの年齢層はあがっていく上に、 『バーチャ』 シリーズへの参加プレイヤーの数はかなりの人数ではあるものの、間口は狭まっていく。だから、今、『バーチャファイター』 を知らない子供は多いんです。名前くらいは知っているかもしれないけど、どんなゲームか知らないっていう子供のほうが多い。それが、10年たった現在の最大の懸念でした。
『バーチャファイター』 はセガの看板タイトルだから、とにかくいまの子供にも知っておいてほしい。『サイバージェネレーション』 は、そういった意味で、次世代への種まきなんです。
『サイバージェネレーション』 は、『バーチャファイター』 とは違う世界だけれど、アキラというキャラがいて、八極拳といった技がある、といったことがわかるし、『バーチャファイター』 特有のアクションを体験することができる。 そういった体験のあと、中学生くらいになって行動範囲が広がって、ゲームセンターに行くようになったとき 「ああ、これが 『バーチャファイター』 か」 って思ってもらえれば。 そういった意味での種まきなんです。
——子供向けの対戦格闘というアイデアはなかったんですか?
——では、これは従来の 『バーチャファイター』 ファンが遊ぶソフトというよりは、『バーチャファイター』 を知らない層が遊ぶソフトだと。
大崎■ いえ、そういうわけでもないんですよ。ある意味、『バーチャファイター』 をやりこんでいる人はすごく楽しめると思う。『バーチャファイター』 でほとんどしゃべらなかったキャラクターたちが、自分の生い立ちとか、戦う理由とか、『バーチャファイター』 そのままの声で話しまくる。これは 『バーチャ』 ファンには喜んでいただけるかと思います。
結局、『バーチャファイター』 で一番面白いところは、物語やゲームに登場するキャラクターよりも、遊ぶ人間そのものだと思うんです。ブンブン丸とか、池袋サラとか、新宿ジャッキーとか (※1)。ゲームのキャラクターよりも、ゲームを実際にプレイして活躍する人間のほうがおもしろいし、有名だったりする。『バーチャファイター』 はそういうゲームなんです。
とはいえ、パイとラウは親子、とかジャッキーとサラは兄妹という設定はあるわけですよ。それはきちんと語ってあげて、世界観を広げてあげたい。今回はそれをやるいい機会でしたね。 次ページへ→
※1:ブンブン丸とか、池袋サラとか、新宿ジャッキーとか…… 『バーチャファイター』 の有名プレイヤー。名前は通称。