名作アルバムVol.1:ガールズガーデン


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■『ガールズガーデン』開発当時

―― 『ガールズガーデン』開発当時の話を聞きたいと思うんですが、これは1984年の発売ですよね?

中■いや、これは1984年じゃないです。リリースしたのは確かに84年で(C)も84年になっていますが、たぶん翌年の2月発売だと思います。

僕は1984年の4月にセガに入って研修一ヶ月やって、すぐにこれをつくりはじめています。それで開発期間は5ヶ月かかっている。その後、ロムの製造に当時は3ヶ月かかるんです。だから計算すると84年はありえない……と、思う(笑)。

当時のチラシか何かで2月発売みたいなことが書いてあったような気がするし、先輩に「2月はモノの売れない季節だ」と言われて悔しかった思い出もあるし(笑)。


―― そうなんですか。もしかしたら今、歴史が変わったかもしれません。
 多くのセガファンは『ガールズガーデン』の発売日は1984年と認識しているはずですから(笑)。


中■たぶん85年の2月、だと思う(笑)。

―― これをつくりはじめたきっかけはどういったものなんですか?

中■入社して一ヶ月の間いろいろなテストプログラムつくっているときに、課長から「研修ということで、女の子向けのゲームを考えてみてつくってみろ」と言われまして、宮内(Hiro師匠)とふたりで最初つくりはじめたんです。

ところが2ヶ月くらい経ったある日、またもやその課長に呼ばれて「あれ、売るから」と言われました(笑)。
 それで途中からデザインでSさんに入ってもらったり、音楽は中林さん……だったかな、林にも手伝ってもらったかもしれないけど、何をやってもらったかは覚えてないです。

ただ、途中でSさんがアフリカに旅に行ってしまったことだけ覚えています(笑)。


―― はじめは研修としてつくりはじめたものだったんですねぇ。

中■セガに入社してはじめてプログラムした作品は『ガールズガーデン』だけど、実はそれ以前にフロッピーディスク(SF-7000)版の『ロードランナー』のマップ作りとチェックをやっているんです。

出たとか出てないとか言われているSF-7000だけど、僕はセガの社内でシリアルナンバー98番とか99番のSF-7000を見ているので、たぶん100台くらいは生産されて出ていっていると思います。

この『ロードランナー』は、ロムで出ていたものとは違います。でも、「本当に売ってたの?」って聞かれたら、それはちょっとわからない。
 発売されていたかもしれないし、SF-7000に同梱されていたかもしれないし、もしかしたら発売されてないかもしれない……全然わからない(笑)。


―― いずれにせよ、その『ロードランナー』は多くても100本くらいしか世に出ていないってことですよね……。
 ちなみに『ガールズガーデン』は、どのくらい売れたんでしょう?


中■8万本つくって、4万売れて、3万がセガに残ったんですよ。

それらはセガが2部上場するときに在庫処分するんですが、秋葉原に大量に流れたんです。廃棄すると余計にコストかかりますから。

……アキバで300円でした。それで僕も買ったんですよ(笑)。当時は会社から製品の支給はありませんでしたから。


■『ガールズガーデン』開発秘話

中■セガに入社してからはゲームの作り方とかプログラムの組み方だって教えてくれないので、他の人のプログラムを読むことをよくしていました。

でも、テーブルの持ち方とか、今、このプログラムのなかを見てみたら恥ずかしくてしょうがないと思う。


―― 企画書なんかはあったんですか?

中■企画書はあったんじゃないかと思います。女の子がやって楽しいもの、主人公はもちろん女の子、その女の子ががんばるものにしよう、なぜがんばるのか、男の子をゲットしたいがためだ、というように宮内と連想ゲームのように考えていきました。

―― キャラクターの名前もその時、考えたのですか?

中■パプリとかミント君といった名前は開発しているときにはなかったので、マニュアルをつくった人が名前を決めたんだと思います(笑)。
 

コッコちゃん

▲これがタイマーの役目もしている、恋敵のコッコちゃん。

中■ここに“コッコちゃん”というライバルがいて、ミント君に花を持ってせまってきているというタイマーがあるわけです。

これに負けないようにパプリちゃんは花を摘んでミント君に渡さなければいけない……という、なんというか今考えても素晴らしい企画というか、感覚的なものとしては最高なものがあるなと(笑)。

しかもクマやハチから逃げながら花を摘まなければいけない。これもね、「花と言えば、ハチが蜜を吸いにくるよね」とか、「蜜と言えば、クマが大好きなものだよね」なんて言いながら決めていったんです。


―― タイマーも数字ではなく、目で楽しめるのがいいですね。技術的には、動かすものが増えて大変そうですけど。

中■マシンスペック的にもスクロールすること自体が大変だったので、かなりの工夫をしてパプリちゃんもハチもクマも画面に表示するようにしました。

SG-1000ではスプライトを4枚しか出せないのですが、パプリちゃんにまず2枚使っているわけですよ。白とピンクで。
それからハチ1匹で1枚。そうするとクマを3頭とか出せないわけですよ。

それでクマはスクロール面(BG面)で書いているんです。当時としては高度な技術で、これは宮内がやっていました。
 BG面ではスクロールしながら花は咲くし、クマも2頭3頭と動き回るので、ずいぶんトラブってしまいました。
……結局、宮内はクマにかかりっきりでしたね(笑)。

―― パプリちゃんの残り人数を“LOVE”と表示したのも、よかったですねぇ。

中■パプリちゃんが池に落ちたりクマに捕まったりすると恋のチャンスつまり“LOVE”がひとつ減って、ハートがパプリちゃんのところまで曲線を描いて飛んでいくんですが、その飛んでいく軌跡を計算するのがもう大変(笑)。

いちいち遠回りしながら、ぐるっと回ってパプリちゃんのところにたどり着くんです。あの動きはデバッグ期間に時間があったのでつくったものなんですよ(笑)。

チャレンジングステージは、スプライトの拡大モードというのがSG-1000にはあって、それを使いたくて作りました。
普通の4倍表示になるんです。

ここでもパプリちゃんに2枚か3枚使って、クマはスクロール面かなぁ?確か10面くらいは用意してあるはずです。後半は壁を利用して跳んだりしなければクリアできない(笑)。

チャレンジングステージ、めちゃめちゃ面白いですよ!


―― そういえば、設定が変わってますよね。
『ガールズガーデン』は女の子が男の子のために花を集めるという設定ですが……普通、反対ですよね?


中■ははははは、よく気づきましたね(笑)。
 今でこそ花は男が女の子に贈るイメージがありますけれど、当時はそうでもなくて花と言えば女の子が摘んでいるものといったイメージがあったんです、僕の中で(笑)。

今はもう女の子が花を摘むという光景を見なくなりましたが、当時はまだ女の子にそういうイメージがあったんじゃないかな、と(笑)。


―― 中さんは、そういう花を摘むみたいな女性が好みなんですか?

中■うん、そういう清楚な女性のほうが好きですね、ははは。

―― 女の子ふたりが男の子を取り合う設定のアクションゲームって珍しいじゃないですか。
 だから、もしかしたら中学とか高校のとき、中さんはこれに似た体験をしていてそれが元になっているのかなって思ったんですが(笑)。


中■いや、それはないです。宮内の願望じゃないですか?(笑)。
LOVE

▲恋のチャンスは3回まで。
 クマに捕まったり、池に落ちるとLOVEをひとつ失ってしまう。


ゲーム画面

▲2面クリアする毎にチャレンジングステージが登場。
 クマの出現パターンを覚えなければクリアは困難。

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