Vol.65
07.04.26 更新
4月24日(火)に配信されたWiiのバーチャルコンソール向けタイトル『パルスマン』。セガサターンが発売となった'94年にメガドライブ向けとして発売された同タイトルの誕生エピソードとは! 今回は『パルスマン』のディレクター杉森建さんに、当時の開発にまつわる話をうかがいました。

MD『パルスマン』ディレクター
杉森 建(すぎもり けん)
株式会社ゲームフリーク 取締役
アートディレクター
ゲームフリーク開発作品として『クインティ』、『ポケットモンスター』など多数の作品のグラフィックおよびキャラクターデザインを手掛ける。『パルスマン』ではさらに、田尻智(ゲームフリーク代表取締役)氏と共にディレクター&ゲームデザインを担当。その他のディレクターとしての参加作品は『まじかる☆タルるートくん』(メガドライブ版)、『スクリューブレイカー・轟振どりるれろ』がある。
『パルスマン』が作られる以前、ゲームフリークとセガの出会いのきっかけはどこからはじまったのでしょうか?
田尻が、学生時代にセガのゲーム企画コンテストに応募して入賞したことが最初のきっかけではないでしょうか。それを機会に田尻がよくセガにお邪魔してはゲームを遊んできていたのですが、そのうち「一度うちでゲームをつくってみないか」と声を掛けていただいたんです。そして初めてつくったタイトルが、メガドライブの『まじかる☆タルるートくん』になります。
「理想のキャラクターゲームを作りたい」との考えから、原作ファン、ゲームファンの両方に楽しんでいただけるよう作りました。幸いなことに、発売後多くの方からご好評をいただけたので、今度は「同じチームで今度はオリジナルの作品をつくってみては?」というお話をもらい、そこから創られたのが、『パルスマン』なんです。

▲ゲームフリークの玄関には今でもパルスマンのパッケージ用に作られたフィギュアが飾られている。

▲彼がパルスマン。なお一番上のイラストは、2001年にゲームフリークの年賀状用に描き下ろした物。
『パルスマン』では、電気になって高速で体当たりする「ボルテッカー」を使ったシステムが非常に特徴的ですが、そのアイデアはどこから生まれたのでしょう?
『パルスマン』のシステムは、田尻と私で考えました。当時メガドライブでもっとも人気のあったタイトルが、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』だったので、それを越えるキャラクターをつくりたいと思っていました。「ソニックが“音速で走る”というのならば、こちらは音より速い“光速”だ!」と考え、「パルスマン」というキャラクターが生まれたんです。若気の至りですね(笑)。
さらに、「ソニックが青いならこちらは赤いキャラを」との考えから「パルスマン」の色が赤に決まりました。「ソニックが360度ループによる曲線の動きなら、こちらは直線的な動きを使った反射移動でスピード感を出そう」との考えからは、「ボルテッカー」の動き方や、電線での「ワイヤーアクション」といったアイデアが生まれました。

▲パルスマンを代表するアクション「ボルテッカー」。実はピカチュウのわざに同名のものがあり、パルスマンファンを喜ばせた。

▲詳細までつくられている凝ったキャラクター設定はゲームフリーク作品にしては珍しいが、これは設定担当の思い入れによるものとのこと。
今回13年ぶりの復活を遂げましたが、改めて見ていかがでしたか?
当時は、まだコンピュータのネットワークと言っても、電話回線を介したパソコン通信くらいしかありませんでした。そう考えると、ネットが普及した世界を舞台として設定したのは、当時としてはかなり時代を先取りした世界観でしたね。『パルスマン』で描いたコンピュータの発達した未来世界というのは、現代のネット事情にかなり近いと思います。 また、『パルスマン』の1面のボスは、ヘッドマウントディスプレイと特殊なグローブを使うことで、コンピュータのバーチャルな世界で手だけの攻撃をしてきます。バーチャルな世界では強いのですが、現実世界ではひ弱なただの青年なので、「パルスマン」のパンチ1発で倒せてしまうんです。
それと1面の背景を見てたら、今見ても「よくやったなあ」と思うほど、細かい部分まで書き込んでますね。 ゲームディレクションは『まじかる☆タルるートくん』が最初で『パルスマン』が2作目でしたが、当時「最初のステージは簡単じゃなくてはいけない」というポリシーを持っていました。そういったポリシーから『パルスマン』のステージ1を作ったのですが、今思うと簡単だけど面白さはなかなか伝わり難いですね。正直なところ、そこは今ではとても反省しています。ですから、この反省を生かして、一昨年久々に作ったアクションゲームの『スクリューブレイカー・轟振どりるれろ』では1面から爽快感を重視しています(笑)。

▲1面のボス、V.R.H(バーチャルハンド)。CG空間にいるパルスマンを怪力で押し潰そうとする。

▲これが1面。なお増田順一氏による、FM音源を駆使したテクノBGMも話題に。有名ミュージシャンによる2種類のアレンジCDの他、LPレコードまで制作された。
杉森さんはかなりのセガファンだと聞いていますが?
そうですね。アーケードゲームの『スタージャッカー』や『フリッキー』などをプレイしているうちにファンになっていたのだと思います。セガのゲームの「生き物なのに頭に金属的なツヤがあったりする」といった独特なグラフィックが、個人的にとても気に入っていました。
そこから、「セガのゲームはなんて綺麗なんだろう」と思って、セガのタイトルを遊ぶようになりましたね。家庭用のゲームは、最初のSG-1000ではアーケードゲームと比べて「なんだこれ?」とか思い、当時はバカにしていたと思います(笑)。しかし、マークIIIはすぐに飛びついて買いました。ソフトもたくさん遊びましたね。『テディボーイブルース』とか『ピットポット』とか。『アストロフラッシュ』なんて何周プレイしたかわからないくらいです。
メガドライブは特にお気に入りだったとか
とにかく、あの本体のデザインが大好きでした。今見ても、本当にかっこいいと思っています。特に、初代の「メガドライブ」と「メガCD」、「スーパー32X」を接続したときのあの迫力(笑。インテリアとしてずっとデスクにおいてあります。もちろん、いつでもすぐに電源を入れられるようになってますよ。コンセント3つをひとつのタップに挿しておいて。
それと、やはりアーケードゲームが好きだったので、「FM音源搭載」とか「スクロール2面搭載」といったキーワードに強く惹かれるんです。アーケードの良質なゲームの移植タイトルがたくさん出ていたので、片っ端から遊んでいましたね。また、他のゲーム機と同時に出たタイトルなどは、問答無用でメガドライブ版を購入していました。全部が全部納得のデキだった……とは言えないこともありましたけど(笑)。
当時はお金が無かったのに、ゲームソフトはたくさん買いました。なかでも好きだったのは、『ファンタシースターII』ですね。あの意外性のあるストーリー展開には驚かされました。『ファンタシースターIII』もすべてのエンディングを見ていますよ。アクションゲームでは、世間ではあまり話題にならないんですが『孔雀王2』とか『ジュエルマスター』とか。ああいう、暗い色使いが好きなんです。少なくとも、僕はとても面白いと思って遊んでいたのですが(笑)。もちろん『ザ・スーパー忍』とかも大好きでしたね。

▲以前、杉森さんはじめゲームフリーク社内の有志で作り、社内のみで配ったという「メガドライブTシャツ」。メガドライブへの愛に溢れる一品。

▲ゲームフリークの会議室の電気式ホワイトボードにもパルスマンの注意書きイラストが。
バーチャルコンソールで面白かったタイトル、出して欲しいオススメタイトルはありますか?
いろいろ落として遊んでいますよ。最初にダウンロードしたのは、『シャドー・ダンサー』と『トージャム&アール』ですね。ただ、ほとんどのゲームは今でもオリジナルのROMを持っていて、今でもすぐに取り出してメガドライブでプレイすることができてしまいます。バーチャルコンソールでメインに買っているのは、いつの間にか無くしてしまったソフトが多いですね(笑)。
バーチャルコンソールで出て欲しいタイトルは……『闘技王キングコロッサス』や『マジンサーガ』とかどうでしょう。特に『キングコロッサス』は、あの暗い感じがとてもオススメです。
最後にみなさんへメッセージをお願いします。
『パルスマン』は、今のプレイヤーにとってはやや遊び難い部分があるかも知れません。ですが、それを補って余りある先進性が詰まっており、当時の“若さ”が詰まっています。また、ネットが普及していなかった時代に我々が思い描いていた電脳化社会は、インターネットが普及した今見てみるととても味わい深いものがありますね。当時考えていた世界と実際がどう違ったのか……など、考えながら遊んでいただいても面白いと思います。
いろいろつたないところもありますが、世界観含めていろいろ苦労したソフトなので、是非楽しんでいただければと思います。